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【現場から現場へ】

[OB MESSAGE] 障害者福祉の現場から

社会福祉法人 とちぎ健康福祉協会
栃木県氏家コロニー 支援二課長(社会福祉士)

池谷 友夫
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●青葉繁れる仙台

 仙台には何かと理由をみつけ年に一度くらいは出かけている。「青葉繁れる」と歌にもあるように,本当に5月の連休ごろの仙台が美しく好きだ。今から30年以上も前に大学という未知の世界に入り,しかも初めての土地でまだ知り合いもなく不安だらけの学生生活のスタートだった。一人街に出て歩く青葉通りや定禅寺通りのけやき並木がなぜか心を和ませてくれたものだ。新緑の時期になると今でもその頃を思い出し仙台が恋しくなるのである。
 大学では好きな山登りばかりやっていた。部室までは行くが,教室まではなかなか足が向かなかった。そんな気楽な学生生活を送っているうちに就職を考える時期になってしまった。自分はこれから何をしたいのか何をすればよいのか,まったく何の考えもなく,ただ地元だから福祉大出身であるからという理由だけで,栃木県にある今のとちぎ健康福祉協会の就職試験に臨んだ。面接で「福祉」について質問されたが,何もまとまった答えもできずにいた。それでも採用される,そんな時代だった。

 私が今仕事をしているのは,知的障害児?者の利用施設である栃木県氏家コロニーである。1960年の精神薄弱者福祉法(現 知的障害者福祉法)の成立により知的障害者への制度的な福祉サービスが開始された。その後の70年代に障害児?者が一貫して過ごし,連続したケアを行う理想郷とされたコロニー設立政策が全国各地で推進されるようになり,栃木県にもコロニーが設立された。ちょうどその頃私もどうにか協会に採用され,始めての配属先が氏家コロニーだった。
 現在は,児童30名?者230名の利用者が生活をし,地域の知的障害児?者の方が通所や短期利用ができる大規模な施設だが,75年に開所した時は30名定員の小じんまりした施設だった。その後5年ほどかけて現在の施設になり,早いものですでに28年が経過している。当時は建物はできていたが,5月にオープンをするまでの1ヶ月間は開所準備期間で利用者はなく,至極のんびりとした雰囲気だった。しかし,町から離れた山の上にあり仕事はまさに新天地を開拓するような日々の連続で,利用者を受け入れるための物品の購入はもちろんのこと,建物周辺の環境整備が毎日の仕事となっていた。特に困ったのは飲み水とトイレで,飲み水は大型やかんを持って山の下の民家まで水をもらいに行き調達したり,トイレは水洗であるが水が出ないのでどうにもならず,しかたなく建物の側の山の中に穴を堀り,工事で残った板を利用して扉つきのけっこうりっぱなトイレを作りそれで急場をしのいだりした。28年経った今でもこのトイレのあった場所を通ると,何となくいまだに窪みがあるように思える。

●ノーマライゼイション

 260名の知的障害者の方が氏家コロニーに入所した理由はそれぞれにあるだろうが,その頃は皆に共通したものがあったと思う。障害者は施設に入所し援助を受けるという考え方である。しかし,現在では障害者は施設に入って生活をするという考え方から,地域社会の中で自分の生き方は自分で選び自分で決定をするという考え方,つまりノーマライゼイションの理念の実現が最大の目標となっている。
 私は,ここで10年間利用者の生活支援をしていた。その後,事務の仕事を含め身体障害者の施設に異動したり,何か所か他の福祉分野をまわり昨年4月から再びコロニーで仕事をすることになった。この間特に感じたことは福祉は経験が大事であるということ。しかし,その裏づけとなるものは知識である。人とのかかわりの中で仕事をする福祉の現場は,常に自分自身を見つめ自分を知り理解すること,自己覚知が澳门赌场app_老挝黄金赌场-【唯一授权牌照】であると思う。それができて始めて「人への支援」ができるのではないかと,最近やっと理解できるようになった。
 来年4月から,障害者の福祉制度が措置費制度から支援費制度に移行することで「福祉サービス」ということを,今までの既成の概念をリセットし,ゼロから考え直さなければならなくなった。私も皆さんに刺激されて,時代に遅れないように少しは勉強しなければならないと思っている。

●通信制で学んでいる皆様へ

 仕事や家庭との両立で勉強時間を確保することは大変なことと思いますが,今はインターネットを利用して情報を得たりすることで時間も有効に使え,また大学との連絡や勉強の相談もできるのでぜひ活用していただきたいと思います。
 科目修了試験や施設実習等でお会いできた時は,遠慮なく声をかけてください。また,社会福祉の専門職の仲間としていっしょに仕事ができる日を楽しみにしています。
 健闘をお祈りいたします。

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